1) 気管挿管の適応
気管挿管は侵襲的かつ熟練を要する手技であり、バッグマスクで換気が実施できている状況であれば、あわてて行うものではありません。
しかし、以下に示すような状況で、手技に熟達した者がいる場合には、気管挿管を行ってもよいと考えられます。
- ●有効な人工呼吸開始後、おおむね30秒後になっても心拍が100/分に満たない場合
- ●人工呼吸だけでなく、胸骨圧迫も必要な状態が長時間続く場合
- ●挿管することで気管チューブを介しての気管内アドレナリン投与を行う場合
- ●出生時のチェックポイントで蘇生が必要と判断された児のなかで、羊水が胎便で混濁し、胎便の気管吸引が気道開通の一つの手段として有効と考えられる場合
- ●先天性横隔膜ヘルニア、呼吸窮迫症候群でサーファクタント補充療法を要するなどの特殊な病態が考えられた場合
2) 気管挿管のタイミング
気管挿管を考慮するタイミングを示します(★)。
術者の技量や状況により、考慮するタイミングは一律ではありません。
3) 気管挿管に必要な物品
気管挿管実施時に準備すべき物品を示します。
- ①(オプション)ラリンゲルマスクLM(サイズ1)
- ②蘇生用フェイスマスク
- ③流量膨張式バッグ(マノメーター付)
- ④自己膨張式バッグ(閉鎖式酸素リザーバー付)
- ⑤気管チューブ(内径 2.5mm, 3mm, 3.5mm)とスタイレット
- ⑥呼気CO2検出器
- ⑦栄養チューブ
- ⑧新生児用喉頭鏡(直型)(ブレード0,00)
(喉頭鏡の光源が明るく点灯することを確認します)
- ⑨新生児用聴診器
- ⑩吸引カテーテル(6, 8, 10Fr・12,14Frは必要に応じ準備する)とバルブシリンジ
| 設備 |
モニター機器 |
一般蘇生用物品 |
挿管用物品 |
- 酸素配管
- 酸素ボンベ
- 圧縮空気
- 流量計・ブレンダー
- 吸引配管・吸引器
- 蘇生台
- ラジアントウォーマー
|
- バルスオキシメータ
- 心電図モニタ
- 呼気CO2検出器
- マノメーター
|
- バッグ
(自己膨張式、流量膨張式)
- マスク
- 聴診器
- タオル
- エアウェイ
- 手袋
|
- 気管チューブ
- 喉頭鏡
- 直型ブレード
(スタイレット)
- 固定テープ
|
4) 気管挿管のながれ(1) ~挿管を行うまで~
①気管チューブの適切なサイズと挿入長
気管チューブのサイズ(径)や挿入長は体重によって異なるので、推定体重から事前に適切なサイズを準備しておきます。
挿管が困難な場合を想定して1サイズ細い気管チューブを準備しておくことが重要です。
| 体重(kg) |
在胎週数 |
チューブサイズ(mm) |
口角までの挿入長
6+体重(kg)cm |
| <1.0 |
<28 |
2.0・2.5 |
5.0~7.0 |
| 1.0~2.0 |
28~34 |
2.5・3.0 |
7.0~8.0 |
| 2.0~3.0 |
34~38 |
3.0・3.5 |
8.0~9.0 |
| 3.0< |
38< |
3.5 |
9.0< |
②挿管のための新生児の基本的体位は、バッグマスクによる人工呼吸のときと同様である(Sniffing Position)。
③バッグマスクで十分な酸素化を行います(先天性横隔膜ヘルニア、臍帯ヘルニア等ではバッグマスクによる人工呼吸を行わずに挿管することがあります)。
④視野を確保するために口腔内を十分に吸引します。
⑤喉頭展開〜挿管の手順
- 1.口腔内に喉頭鏡のブレードを挿入し、ブレードを喉頭蓋の少し奥まで進めます。
- 2.喉頭鏡を児の足側の方向に持ち上げるようにして喉頭を展開します。
その際に、上口唇あたりを支点にしてくぎ抜きを使うように喉頭鏡を術者の手前に引くように動かしてはいけません。
- 3.喉頭展開の手技で声門が直視できれば、右口角から気管チューブを挿入します。
- 4.声門が開いたときに声帯指標線が声帯の位置にくるまで、気管チューブの先端を挿入します。
声帯の位置に声帯指標線が一致していれば、声帯と気管分岐部のほぼ中間に気管チューブの先端が留置できているはずです。
- 5.スタイレットを使用すると挿管が容易になることがあります。使用する場合には、先端が気管チューブより突出しないように手元を折り曲げて長さを調節します。
また、スタイレットを気管チューブに通した後、少し湾曲させておくと視野が確保しやすくなります。
⑥1回の挿管手技は20秒程度にとどめ、一旦挿管の試みを中止して再度バックマスクによる人工呼吸を十分に行い、心拍やSpO2値が改善した後に改めて実施します。
⑦数回行っても挿管できない場合は他者と交代することを検討します。
5) 気管挿管のながれ(2)〜挿管を行ってから〜
①気管挿管成功の判断
チューブ先端が気管内に適切に留置できていることを確認するために、以下の項目をチェックします。
- ・両側の胸部が左右差なく上下している
- ・呼気CO2検出器が呼気時に紫から黄色に変色する
- ・5点聴診し、エア入りに左右差がない
- ・胃部の膨隆を認めない
- ・心拍数、SpO2値が改善する
- ・チューブ内に水滴(くもり)が観察できる
②気管チューブの固定
テープで固定するまで、挿管実施者は気管チューブが抜けないよう手で固定します。用意していたテープで左口角にチューブを固定します。固定する位置は、「体重(kg)+6cm」を目安にします。
| 体重(kg) |
在胎週数 |
チューブサイズ(mm) |
口角までの挿入長
6+体重(kg)cm |
| <1.0 |
<28 |
2.0・2.5 |
5.0~7.0 |
| 1.0~2.0 |
28~34 |
2.5・3.0 |
7.0~8.0 |
| 2.0~3.0 |
34~38 |
3.0・3.5 |
8.0~9.0 |
| 3.0< |
38< |
3.5 |
9.0< |
6) 気管挿管手技の一連の流れ
以下のような流れを想定しています。
sniffing position→口腔内吸引→十分な酸素化→喉頭展開→チューブ挿入→片手でチューブを固定しつつバギング開始→5点聴診、呼気CO
2検出器変色→位置調整後テープで固定